経皮毒がニセ科学の烙印を押されてしまった理由

経皮毒の本来のテーマというのは、「私たちの暮らしは化学物質や環境ホルモンで取り囲まれていて、そうした化学物質や環境ホルモンが健康を害しているからできるだけ避けるようにしましょう。」というものだと思うんですね。

一見、すごくまともなことをいっているように思えるのですが、なぜ「経皮毒」はボロクソに叩かれて、「トンデモ」「ニセ科学」というレッテルが貼られてしまったんでしょうか?

経皮毒=マルチ商法と紐づけられたのが運のつき?

女医

経皮毒って知ってる?シャンプーや歯磨き粉にはね、ラウリル硫酸ナトリウム、 プロピレングリコール、エデト酸っていう有害化学物質が使われていて、皮膚から体に染み込んで皮下組織や皮下脂肪に蓄積して アレルギーやガン、子供の奇形とかになる可能性があるんだって!

えー本当ですか?シャンプーも歯磨き粉も何も考えずに使ってました。でも、どうすればその経皮毒というのは避けられるんですか? 一度体内に取り込んだら排出できないんですか?

女の子
女医

実はね、安全な成分だけを使ってシャンプーや日用品を開発している会社の製品があるの。その会社の製品なら経費毒の心配はしなくていいし、 動物実験もしてないし、地球にもやさしいから安心なのよ。

すごい!その会社ってなんてところですか?私も使ってみたいです。使ってよかったら両親や友達にも教えてあげたいな。

女の子
女医

興味もってくれた?実は今度その会社のセミナーがあるから一緒に行ってみましょうか?

・・・・・・。

といった感じの会話が少し前まではいたるところで繰り広げられていたんですね。(もしかしたら今も?)お気づきの方も多いと思いますが、これって典型的なマルチ商法の勧誘です。 そう、経皮毒はマルチ商法の勧誘によく使われていたんですね。

調べればすぐに、どこのマルチ商法の会社が経皮毒をもちだして勧誘していたかはすぐわかるのでここでは説明しませんが、 このマルチ商法の会社は結局、経済産業省から特商法違反(商品についての不実告知)の指摘を受けて業務停止になっています。

こういうこともあって、「経皮毒=マルチ商法の勧誘文句」というマイナスイメージが広まり、専門家からも経皮毒については「科学的にも生理学的にもあり得ない話」だと否定されたため、表舞台から姿を消しました。

そもそも経皮毒とは何か?ということなんですが、経皮毒研究会という人達が作った造語であって学術用語でも医学用語ではないです。 「経皮毒性」とか「細胞毒性」といった似たような用語はあるんですが、だいぶ意味合いが異なります。

『経皮毒』という名称は皮膚から侵入した化学物質が体のなかで有害な作用を引き起こす怖さを理解していただくために名付けたもの 【脱・経皮毒 山下玲夜著 p10】

そうしたこともあって、根拠となる論文、研究書などの学術的書物は一切ありません。「皮膚から化学物質が浸透して蓄積することで病気になる」ということは、 今のところ何の科学的な裏付けはなく、あくまで個人的な体験やおそらくそうに違いないという希望的観測に基づいた解説なので医師などに経皮毒の話をすると失笑されます。

とはいえ、何冊かでている経皮毒の本などを読むと、経皮吸収に関する一般的な知見と独自の理論がうまくつなぎあわされているので、 皮膚のかんする知識が皆無な人や「ロハス」とか「エコ」とか「オーガニック」といったキーワードに弱い人はコロッと騙されてしまうかもしれません。

また、経皮毒にかんする一連の書籍はマルチ商法の会社が活動しやすいように「経皮毒」という用語を世間一般に普及させるために書かれたものだという噂も根強いです。 実際、マルチ商法の勧誘をしていた人達はそれらの本をバイブルとして勉強していたようですし。

ココが変だよ!経皮毒

  1. 科学的な根拠・裏付けなしに、とにかく化学物質のリスク&毒性ばかりを喧伝していること。
  2. 無添加、天然成分を売りにした商品を売るために作りだしたウソの可能性があること。
  3. 実際に関係があったのかは不明だがマルチ商法に利用されて怪しさが先行してしまったこと。
  4. 日用品の危険性を訴える内容なのに、なぜか化学兵器のサリンを例に出してくるおかしさ。

経皮毒と化学物質のリスクは切り離して考えること。

とはいえ、化学物質の人体へのリスクは過小評価してもいけないし、過大評価してもいけません。

というのも日本では「危険性あり」と表示を義務付けた成分(旧指定成分)は102種類あったわけですけど、 同じように有害指定されている成分というのがアメリカでは800近くあるんですね。

アメリカでは発がん性やアレルギーなどの危険性があるからとして使ってはいけない成分が日本では使っていい成分になっているという事実があるんです。

そういうこともあって私たちが暮らしていくなかで化学物質の悪影響というのが突然発覚するケースもあります。 最近だと、柔軟剤を使う人が増えたことで、香りに含まれる化学物質の影響でのどを傷めたり、めまいや吐き気を覚える被害が増えているという国民生活センターからの報告がありましたよね。

シックハウス症候群とかシックカー症候群など、いわゆる「化学物質過敏症」というリスクは化学物質が生活のどこもかしも入り込んでいる 今の生活環境のなかでは常に考慮しなくてはならない問題になっているといえるわけです。

ただ、化学物質が日用品等に利用されるのには当然、メリットがあり、理由があります。デメリットについては商品化される前に安全性実験をして、「この分量で使うのなら害はないというレベルで商品化されている」はずなんですね。

もちろん「危険」を証明するよりも「安全」を証明するということの方が難しいということもあって、 安全性実験でも、「危険がない」ことを確認しているのであって、「安全だ」ということを確認しているわけではありません。

そのため短期的には問題がなくても、長期的に使うと問題が出てくるということがあるのは否定できないわけですが、 それでもグレーな部分が多いものであるからこそ、安全性や危険性については科学的根拠が必要になるわけです。

経皮毒については、その科学的根拠が乏しいだけでなく化学物質のリスク部分にのみ焦点を当てて、いたずらにバイアスをかけているという点、 そして、不安を煽った後で自社製品こそ安全で確実なものだとして売り込みが入る点が問題視されている一番の理由といえます。

経皮毒の問題から私たちが反省すべきこと

  1. 化学物質のリスクは過少評価も過大評価もしてはいけない。常に注意は払うこと。
  2. 健康や美容に関する情報は根拠の有無(=情報レベル)をちゃんと確認しよう!
  3. 安全性の証明は難しく、「危険がない」ということで使われている化学物質はよくある。
  4. 悲しいかな、文系の人は科学的知識が乏しいためイメージで判断しがちで騙されやすい。

経皮毒とその影響

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